(イラスト・小林ユキト)※アマテライザーを持ったテルヒコとユタカ

 

宮崎県内にてテレビ放映(全国にて配信)中の特撮ご当地ヒーロー番組「日神ジャスティオージ」。その物語が産声を上げるまでの軌跡。

 

本編で活躍したキャラクターたちの記憶。大善が、石上が、卑弥呼が、ユタカが・・・。テルヒコ(日神オージ)が―。

 

クラック(亀裂)し展開、各時代、世界に飛散する物語を熾烈に、強烈な色彩で彩ったキャラクターたちの神秘に包まれた記憶の真相を解き明かす外伝ストーリー。

第3期となる未来記編(100年後)にもつながってゆく衝撃の「誕生の秘密」が記された本エピソードを見ずして、この物語(本編)は語れない!そんなストーリーになっています。

 

伝承の最奥にある真実。

そこでほほ笑むのは、天使か悪魔か

創世の神か。

 

 

(後日ラジオドラマ化予定)

(※左/石上雅也&右/甲三=九尾の狐)~イラスト/wakuyu~

 

 

 

あらすじ(キャラクター紹介)

古代日本は消えた幻のクニ邪馬台国に秘匿された鏡、アマテライザー。
神秘の鏡の力に導かれた記憶を失った青年テルヒコ(海照彦)は人々を守るべく
突如としてその力を体現させた日神(にっしん)へと創聖(そうせい)し
迫りくる闇よりの使者(マガツカミ)を打ち祓うのだった。

失踪中の祖父大善の残した古文書など手がかりをもとに行動を開始したテルヒコは
自らの失われた記憶を探し人々を闇の巨大組織クロウの手より護るため
地域のNPO法人地方創生プロジェクトを運営する女性、ひなたと共に
表向き(ジャスティオージ/ひなた命名)というご当地ヒーローを名乗り
そのイベント事業の影に隠れ戦うことになる。

鏡のほかに存在していた剣(リューグレイザ―)、勾玉(サクヤイザー)という
三神器を手にする戦士、リョウとハナという仲間を得たテルヒコは
忽然と彼らの前に現れる卑弥呼と、鏡に封じられた謎の女神、ユタカ(アマテラスに関する力を持つ2人の女性)
らの声に呼ばれ、次々と現れるマガツカミたちと無軌道なバトルを展開してゆくのだった。
青年は自らのうちに眠るパワーと闘いの先に何を見るのか-。
この小説は、その謎の真相を密かに書き綴ったものである。

~主なキャラクター~
(本編に登場)

 美麗な表紙イラストver.と異なるアニメver.による作画となっております。

テルヒコ(主人公/日神ジャスティオージ)

熱い激情、心を燃やし戦う記憶喪失の青年。外見年齢推定20代中盤。太陽の神、アマテラスの力を持つ。(彼個人の立ち位置はスサノヲなどに近い)鏡の力で本能的に闇を察知し、人類の闇がある限り存在するマガツカミと永遠ともいえる時の中で戦い続ける。弥生、平安、戦国、昭和、令和と様々な時代(老化せず)変わらぬ容姿で現れ戦いの中様々な人々と出会ってゆく。かなり一本気でストイックなところがある青年で話題や流行に疎い、器用でない天然なところもある。現代にて学生時代は剣道部に所属した。その正体は邪馬台国の戦火の中命を落とした亡国の王子でもある。
(魏志倭人伝に登場する卑弥呼の弟・補佐的立ち位置)
当時ユタカを守り切れなかったことが彼の中でおおきなトラウマとなっている。
単体でも強い霊力を持ち、邪悪を祓う言霊を祭祀用の古代剣に宿し戦う戦士でもある。


 

ユタカ(ヒロイン/麗神タチバナ)

アマテライザーを通し現れる女神。テルヒコにその日神の力を与える。
本作最大の謎とも言える存在。男勝りで気丈(クール)な面があり、邪神に畏怖されるほどの力を持つが
子供っぽく繊細な面もあり本質は情が深い人物。
敵の台詞から(封印された女神、マガツヒノカミ/アマテラスの荒魂)だと称されることもあった。

 

火野琴美 

本編序盤に登場した神出鬼没の謎の女。テルヒコに真紅の神獣鏡を渡し「創聖せよ」というメッセージを言告げる。組織クロウ、主人公らの動向を俯瞰し意図的に戦わせているように見える節がある。

 

石上(冥王イブキとなる)

テルヒコの祖父大善のかつての親友。もと大日本帝国陸軍の歩兵連隊所属(少佐)。
家に伝わる名刀、天狼丸を愛用する。戦後人類に絶望、魔界に魂を売ったものの一人として
日本を裏で支配する組織クロウ、工作員部隊のリーダーとして暗躍する。
カラスのような黒づくめにペストマスクをかぶり癖のある言動をする。
番組後半では黄泉の国の主九頭龍と契約し冥王イブキとなってオージと
死闘を繰り広げたライバルでもある。

 

九尾の狐 

本作最凶の敵ともいえる存在。本小説では性別不詳の少年、甲三(左)に化け行動する。
様々な時代において陰から人々を己の意のままに操り世界を混乱に
陥れてきた。彼が滅ぼした邪馬台国もその一つであり、テルヒコからは相当な怒りを買っている。
闇の陰陽道を統べる尋常ならざる力の持ち主で、常に周囲を嘲笑いその心は冷血な悪魔のそれである。
人としてのライバルである石上とはちがい霊術という側面でテルヒコの仇である。(右/TV版の九尾)

 

八竜院長官

クロウ宮崎支部のリーダー格。石上と知古であることがうかがえる。東京府中市・埼玉鴻巣市など各支部に頻繁に長期出勤することも多く県外各地で幾度となくテルヒコらと激突する。巨大な八岐大蛇の力を首都圏域にて召喚させ、東京で戦うオージのみならず都市部を壊滅させ都民を苦しめた。(上京編はラジオフチューズより放送/全6話)もとは人間であり、不慮の事故で亡くなった息子マモルを生き返らせるべく闇へと堕ちた過去を持つ。歪んだ同情心からではあるが児童養護施設を運営するなどして身寄りなき子供を保護する半面クロウの先兵として育て、最愛の息子を甦らせる目的のためなら自分さらには他者の命をも悪魔へ捧げて構わないというある意味でマガなる人間らしさと歪みを体現した人物。皮肉にもマモルは赤子の姿で復活するも魔王(ルシファー)受肉の器として選ばれてしまう。

卑弥呼 (ヒミコ)

邪馬台国の女王。テルヒコに(火野琴美)という偽名を使い本編第1話でアマテライザーを託した。(その一方時代状況により少女、老婆、妙齢の女性など様々な姿で現れる、古墳地下の岩戸で大善が目撃した異様なる”光景”から火野と彼女が同一存在かどうかは謎に包まれており、邪馬台国の所在共にいまだ多くの不可解な点も残されている。)

 

ユタカ(豊/弥生時代)

弥生時代の倭国において女王の最有力・後継者候補とされ育てられていた少女。(過去編にて登場)現代の彼女の佇まいから想像もつかないほど無邪気で明るいおてんばな少女。いまだ無垢な存在であり、悪意を持つ臣下相手に呪殺手前に追い込むほどの強い霊力の強さに内心自ら思い悩んでいる。覇権を狙う者たちからは力を狙われ、嫉妬深い巫女たちからは何かにつけ疎んじられている。

 

大善 

テルヒコ(海照彦)の実の祖父。考古学者でもあり、神道にもその造形は深い。穏やかで寡黙な学者肌で戦時中は衛生兵として戦争に参加していた。宮崎県の大学で教授をやっており、当時のテルヒコら友人たちを自らの考古学サークルに招き入れ、全国各地を研究し古代の真相を解明すべく研究していた。実家は日奉神社という神社であり、海家は(古代邪馬台国)の子孫にあたる。アマテライザーは戦前まで神社の宝であり、別系統の同族である石上率いる陰陽連特務機関カラス会(のちの組織クロウ)に命を狙われる。

 

ひなたさん(日向夏)

テルヒコらの数少ない理解者。宮崎にてNPO法人、地方創生プロジェクトを運営しているバイタリティ溢れる女性。(50歳。主に平時は児童クラブを運営するなどしている。)大善教授の研究所付近で海を見つめていた記憶喪失の青年テルヒコを助け、彼にその仕事を手伝わせている。創聖者であるテルヒコの能力、姿に驚きもしないばかりか、(あれはどっからどうみてもヒーロー)という理由から、突発的に思いついた地元のご当地ヒーロー(地方創生ジャスティスオージ)という看板名で正体をカムフラージュし堂々と地域で戦闘するよう助言するなど独特のセンスとぶれない前向きさで彼らをサポートする。

(番外編に登場)

リョウ(水神ジャスティオージ)

リューグレイザ―(剣)のちからにより蒼きオージへ創聖する、凄腕ダンサーの青年。神話の神海幸・山幸の力を持つ。某韓流アイドルグループとコラボするなど有名な人物であり国内でも彼のファンは多い。兄である水騎リュウが改良を加えたシステムである青のオージの力を短期間で引き出し、さっそうと現れて驚異的スピードと機動力で敵を撃沈させる。
水のようにどこかつかみどころがない人物で飄々とした楽天家、明るい自由人のような節があるが
初対面の人物の本質を見抜けるなど時折核心をつく発言をする。
大の特撮ヒーローファンであり性格からなにまで正反対であるテルヒコのよき「相棒」としてクロウと戦った。


 

リュウ(初期水神オージ/リューグランサーシステム)

 

幼少~大学時代のテルヒコの親友で大善の考古サークルの教え子。普段は知的で一見穏やかな青年だが、内心では強い独立心と屈折肥大した競争心など心の闇を持つ。文武両道の秀才で剣道の有段者。趣味は声楽(オペラ)。学生時代は声楽、剣の道で友に異常なまで執着し打ち負かす、結果その道を断念させたほど。海難事故から生還し神霊(ウミヒコ)から授かった三神器のひとつである青銅剣(リューグレイザー)を手に謎のスポンサーであるクロウより資金援助を受け剣を復元させることに成功。自ら後の水神皇子=リューグランサーシステムの被験者となり、マガツカミを(未知の脅威)と位置付け独自にハントし続けていた。神器と縁を持つ創聖者ではないことから暴走、日神オージとの交戦中大ダメージを負ってしまう。その後搬送先の病院にて行方不明となる。


 

ハナ(姫神サクヤ)

コノハナサクヤ姫を祀る宮崎の恒久神社の末裔である少女(小学5年生)。
代々神社の少女にそのパワーを与えてきたサクヤの力が宿る勾玉(サクヤイザー)の加護を受けており、
サクヤの神話通り、火山の如き威力を持つガトリング砲フローランチャーによる
援護射撃、小柄な体躯を生かした忍者のような隠密戦を得意とする。
ダンスにおいてはリョウの教え子でご当地アイドルをやっている。
周囲によく諫められることもある無邪気な年相応の少女であるが、かなり現実的な思考も持ち合わせておりテルヒコとリョウを兄のように慕っている。テルヒコには戦いに加わることを心配されているが
強気な性格とその素質により数多くの危難を乗り越えてきた。
ひなたと共にテルヒコの世話を焼き心配するなど結構しっかりしている。

大生部アイリ(AILI)

最近巷で話題沸騰中の女占い師。(episode3に登場)日本書紀に記録の残る偽神(常世蟲/アゲハ蝶の幼虫)を詰め込んだアクセサリーを信者~世間に売りさばき所願望の成就を説く。本人自身が巨大な蝶(羽化した常世蟲)そのものとなり初めて出会った頃の当時の創聖者3人(テルヒコ・リョウ・ハナ)と対決する。

火輪(後のモゾナギンガー)

戦前宮崎市の闇市で石上(のちのカラス男ことマサヤ)や仲間たちと共に見世物小屋をやっていた化け猫。自分より可哀想な「もぞなぎぃヤツ」を見つけることを生きがいとしている。(火輪)という名前の女性として化け暮らしているが、性別そのものはれっきとした雄。悪事を繰り返していた自分に興味を抱きやくざな商売をする仲間へと迎え入れたマサヤを親分と呼び慕う。人懐っこい性格だが、人の死や葬式の報告を喜ぶなどやはりその本性は残忍なる妖の一匹。(※後の本編にてオージと戦った化炎神モゾナギンガー。)

石上西湖

神道家にして武道の達人である石上雅也(後のカラス男)の父。大化の改新以降滅びたとされる石上(いそのかみ)一族の末裔であり、彼自身も異能(超能力/サイキック)の素質を持ち西湖自身も一族に伝わる秘伝などの研究を続けている。人格者で戦前山伏として修業をしていたテルヒコと稽古をするなど短期間だが親交があった。カラス会の時期後継者候補として息子をつけ狙う組織と、その代表者を名乗る少年(甲三/九尾の狐)との果し合い(サイキックバトル)に単身挑む。

アクル(魔尊六人衆) 

 

讃岐、吉備の海に住んでいたとされる巨大な怪魚。海上保安官の青年の肉体に憑りつき、

護衛艦の人間たちの前に全裸で現れなぶり殺しにしてゆく。(巨大魚/人型形態の2つを持つ)
日本という国家そのものに強い憎悪を抱いており(国を潰したい)という願い、その能力と凶暴さに目を付けた八竜院によりスカウトされる。日本書紀に記録のある邪神(屈指のマガツカミ)ら6柱により構成された所謂エリート集団・魔尊六人衆の頭目。協調性などは一切なく、気に入らない存在であれば味方であろうとも誰彼構わず捕食し形態を進化させてゆき、存在~生態系含む万物の頂点をめざし行動する。埼玉県鴻巣市の戦闘においてリョウのリューグランサーシステムを半壊状態まで追いつめるほどの猛悪ぶりを見せつけた。

アメノサグメ(魔尊六人衆)

 

占い、詐称の女神アメノサグメの魂を宿す女、矢崎香の肉体を媒介にして現世によみがえった六人衆の一柱。
古代原初の生物もしくは植物のような無数の触手(マガツテンタクル)と阿修羅の如き複数の腕を持ち、強い嗜虐性を持つヤバい女。ほかのメンバー同様元はごく普通の人間、商社で働く平凡なOLであったが暴力衝動、その本能が蠢きだしある日突然届いた八竜院という男からのメールに記載されたダークウェブへの招待状を通じ他メンバーたちが集う秘密クラブへと参加、彼らと共にその道を歩んでゆくこととなる。

両面宿儺(魔尊六人衆)

 

飛騨国~美濃国にその伝承を持つ。計八本の手足に両面の顔を持つという奇怪な姿で語られる異形の人で

日本書紀においては皇命に従わぬ賊の一人とされた。その一方で地域によっては救世観音の化身とされ信仰される

寺を開いた人物として語られるなど多様な伝承がある。学生時代バス事故にあった考古サークルの前に現れ

意味深な言葉を残し去る。

鵺(魔尊六人衆)

 

六人衆の一柱。ホームレスの中年男性西野が変貌した姿。仕事と家庭を同時に失い、壮絶ないじめによる息子の自死など

彼もほかのメンバーとは異なる闇を抱える。

倍汚(植物群)怪神軍団(クロウ鴻巣支部所属)

 

クロウ埼玉鴻巣支部所属の植物~害虫の特徴と地域に住むマガツカミらの能力を

掛けあわせ作り出された怪神(かいじん)シリーズのひとつ。主に怪神(かいじん)とよばれる

存在は石上少佐が発明した”霊術兵器”の呼び名で、これら仰々しい姿やダジャレのようなセンスの呼称も

制作者の石上自身が見世物小屋で働いていた暗い原体験から来ているものと思われる。

地域ごとに姿やコンセプトも全く異なる。

(”怪神”シリーズはクロウが産みだす独自の兵器を指す名称で、元はほとんどが野生のマガツカミである。)

新章(外伝ノベライズ)解禁!

(※火野マモルが創聖した八咫烏)

ノベライズ(後日譚)にて登場予定~新生クロウ構成員

火野真守(マモル)

中嶋(ナカジマ)

きく


若宮(ワカミヤ)

林(ハヤシ)

かごめ

加茂(カモ)

八王子(ハチオウジ)

トビオ

秦野(ハタノ)

びぃっこチャン

 

~前奏~プロローグ

 

 

その昔、神々の物語があった。

 

最高の神である女王アマテラスの支配する天上の神を天津神族(あまつしんぞく)。

 

地上にもといた神を国津神族(くにつしんぞく)とよんだ。

 

アマテラスにつかえる部下の神々は天使とよばれた。

 

あるときひとりの天使が天上界に反逆をおこす。

 

その結果敗北し堕天したその最強の天使は魔王となり、ここに魔界がうまれる。

 

天上界と魔界、光と闇は果てしない時空のなかで火花を散らせ、

傷付いた神々ははるか宇宙の先、太陽系第三惑星地球の宮崎県へと天孫降臨(てんそんこうりん)した。

 

そう、ここは太陽のクニ宮崎。

 

 

彼ら神々の力は無限の可能性を秘めたライザーポータブルとして技術化され、令和の新時代いま、よみがえる!

 

創聖(そうせい)せよ!

 

-この物語は神話となる。-

 

 

 

 

 

※冒頭ナレーション

 

 

令和初頭、日本海海上・・・・・。

 

 

 

精彩に富んだ青き空の中より突如現れたその邪なる影、

黒き瘴気により次々と沈黙、破壊された海上護衛艦の残骸。

 

キィ―――――――ンッ!

 

遠くはるか彼方から飛翔し接近する光・・・!

 

「俺は貴様の禍(マガ)を打ち祓う!イブキ!俺はここだァア―――――――――ッ!(テルヒコ/日神オージ)」※【台詞後方( )=キャラクターの名前】

 

日神オージ(テルヒコ)の握りしめる、十束の剣(アポロンソード)が

紫黒(しこく)の瘴気を纏った魔神(イブキ)へ振り下ろされた。

 

(来い・・・・・・・天狼丸!)※名刀・天狼丸を出現させた冥王イブキ/石上。このとき、イブキとオージとが鍔迫り合いとなった。

 

ガッキィイュイーンン!(飛び散る火花・鈍い金属音)

 

眩い光が乱反射する空の下、海の青、大気を切裂き咽ぶ怒涛の気迫のなかぶつかる二つの意志。

 

緊張感と死への高揚感そのコントラスト、二つの剣と男たち(テルヒコと石上)の魂が激しく交錯する。

 

(石上・・・・・・・・!!!)※テルヒコ心の声

 

黄泉の国の王、冥王として地上に君臨した因縁の敵、イブキと日神(アマテラス)の力を受けた王子、テルヒコの互いの全てをかけた戦い。

 

ぶつかり合うプライド、

悲しみと愛、憎しみのすべてがこの時、この空間を喰らい尽くしていた。

 

「それでこそ堕としがいがある!来い・・・オージよォオ!(冥王イブキ/石上)」

 

「ハァアアア―――――――ッ!(剣で空を斬るテルヒコ/日神オージ)」

※動きをイブキに読み切られ、振り向きざま火花を散らしぶつかる二体(王子/冥王)

 

「!!(テルヒコ/日神オージ)」

 

「私とお前は似ている・・・!

共に呪われた宿命を背負う、同類なんだヨォオオ!(冥王イブキ/石上)」

 

「貴様がじいちゃん(大善教授)を・・・

お前の産みだしたその業は、この剣の光が切り裂く!テラセイバーはただの剣じゃないぜ!

(テルヒコ/神技(しんぎ)を繰り出す剣、テラセイバーを出現させた日神オージ)」

 

「できるかなそんなモノでェエッ!非力な弱者共の祈り、それだけでェエ―――――!!!(オージに真空飛び膝蹴りを喰らわせるイブキ/石上)」

 

「再創聖!(テルヒコ/瞬間的に別形態へ変化する日神オージ)」

 

(チェンジ・ライトニング)※アマテライトニング形態=新・進化形態へと姿を変質させたオージ。

 

バキュイ――――ンッッ!!(変化、その光の膜で弾き飛ばされるイブキ)

 

「こざかしい男だ!だがそれがいい!その真の姿・・・

待っていたぞこの時を・・・・据え膳食わぬは男の恥だァア――――ッ!(裏返った声の冥王イブキ/石上)」

 

 

 

日神オージと冥王イブキ、宿命の戦いのさなか・・・・・・。

 

 

ワームホール、次元を繋ぐ異空間の中金色の翼を広げ美しく飛び舞う魔王(ルシファー)・・・。

 

それを迎え撃たんと剣(アメノサカホコ)を構えた巨大な真紅の武神(アマテラスコウタイジン/ユタカ)。

 

愛憎を巡る戦いは彼ら(ユタカと魔王ルシファー)の中でも平行線をたどっていた。

 

 

「こんなゴミ共(全人類)のためにィイ・・・あんなヤローのためにあんたは・・・!

ならなぜ、俺を・・・俺という存在を。(魔王ルシファー)」

 

(すべては、あんたが・・・・!)※魔王ルシファー

 

「その愛が手に入らねえなら、俺はあんたを殺す。追い詰めて・・・・・何光年かかっても・・・

なあ、答えてくれよ・・・!ッツ答えろよォオッ―!(少年の声・魔王ルシファー)」

 

眩い黄金の光に包まれた白き堕天使・・・魔王(マガツテンシ=曲天使ルシファー)と

 

時の狭間の中ぶつかり合う光の機神(アマテラスコウタイジン)。正邪の太極図を描くように飛び交う二つの光(コウタイジン/ルシファー)。

 

滞空間織りなされる閃光のドッグファイトは鮮烈を極めていた。

 

 

「ええ愛していた・・・今でもそうよ・・・。だから、お前だけは、この私の手で・・・!(アマテラスコウタイジン/ユタカ)」

 

「なら消えろよおお!!!!ガァアアーーーーッッ!!(魔王ルシファー)」

 

「ハァア―――ッ!(巨大な機神・アマテラスコウタイジン/ユタカ)」

 

命の起源、生命の樹に成る黄金の果実を探して。

 

君子、生者、愚人、死者たちもが求めたかがやき(存在の証)・・・。

 

全存在をかけた神々の闘争。

 

時が流れてゆく・・・・・すべては泡沫(うたかた)の夢のように・・・。

 

人の波がゆく現世(うつしよ)で、

 

愛の物語が紡がれる、この地球(ホシ)で・・・!

 

重なり音を立て空を舞う翼、戦士たちの胸の中に、瞬間的にそれまでの記憶が電光石火となり走り抜けていった。

 

「ユタカ、俺たちは何故・・・・・・!(テルヒコ/日神オージ)」

 

「チェストォオ!そこだァア―――――ッ!(飛び掛かる石上/冥王イブキ)」

 

(・・・・・・!!)※テルヒコ/石上

 

止まる一瞬の刻、その空白の中で彼は思い出していた・・・。

 

失われた記憶。

 

心に刻まれたその"歴史のすべて"を・・・!

 

 

episode.1 業火

(※ナレーション=大善の記憶。)

(本作品はフィクションです。シーンをイメージできるようほとんどの台詞の後尾にキャラクターの名前( )が記載されています。youtubeに無料公開中の1話と共にお楽しみいただくとさらに本小説をお楽しみいただけますので興味のある方は是非ともチェックしてみてくださいね。)


奴の、石上(いそのかみ)の銃弾が僕の右胸を貫いた。

真っ黒い影が見える。

そこに居合わせた人、全員を空間ごと捻じ曲げ喰らい尽くしてしまうような禍々しい影が揺らめいて見えていた。

笑っている・・・それとも泣いているのか。

もはやそんなこともわからなくなってきた。

それくらいその時の僕の意識、精神は憔悴しきっていた。

真っ赤に溢れ出した鮮血と、もはや”ヒト”ではなくなってしまった彼自身の背負う意識がその時の僕を殺した。

彼の涙の雫と共に僕の記憶は遠く遠い、はるか彼方へと飛んでいった。

だが、死ぬ前に一言やつ(石上)に勝利宣言させてもらいたい。

唯一僕が期待していた出来事が達成されたようだ。

だってほら・・・・・・・

「姉さん・・・・・・・じいちゃん・・・!・・・・・・これは、この姿は・・・・(テルヒコ)」

死にぞこないの私(僕)のかすんだ視線の先に、散らばった壁面鏡の中に映る姿。

ついに本当の意味で復元されたか・・・。

あの鏡が、ついにようやく。

「みんな・・・・・・・・・(テルヒコ)」

炎。血。夜の研究室は真っ赤な絵の具がぶちまけられたように虚しく沈んでいるかのようだった。

姿見に映る存在。

人間の姿からははるか遠い物となった自分の”カタチ”にうろたえているテルヒコ(孫)の姿が見える。

(ざ・・・まぁあみろッ)

血に咽ながらニタあっとほくそ笑む私の顔を無表情の冷徹な目で見つめる者たちがいた。

工作員部隊だろうか。小銃を持った不気味な仮面の奴らに私は声にならぬ声で高らかに勝利宣言していた

・・・しかし。

惜しいなあ。もっと目に強く、深く焼き付けておきたかった。

もっと僕の方からキミに、君たちに言い残しておきたいことなんて、山ほどあったんだから・・・。

テルヒコ、キミが死んだら・・・。うち(海家)はこれでほんとうにおしまいだ。

もう、なにもかもおしまいのようなものかもわからない。

だけれど、きっと信じてる。キミたちが奴らに打ち勝つことを、私は・・・。

黒い仮面(ペストマスクと思しきカラス面)を装着している石上は闇のなかにたたずむ本物のカラスのようであった。

「先生・・・・・逃げて、ください・・・ぐへああっ(研究生のひとり)」

教え子である学生たちを踏みつけその足音はこちらへと近づいてくる。

影の奥からすうっとぼやけて現れた、白いもう一つの仮面が・・・。

「まだ息があったんだねえ。ジジイ。(九尾の狐)」

その奥から・・・聞き覚えのあるもう一人の澄んだ女性の声がした。

彼女は・・・・・・。?!

?!!!!!!

どうして・・・。

ズガガガガガガガガガガガ

重く鈍い銃声と共に森の中に狂乱する獣のような声がこだました。

「じいちゃん・・・・俺は・・・・・・・・うぁああああああああああああああああああ!!!!!!!!!(テルヒコ)」

episode.2  意識の連鎖

(※ナレーション=メタ・第三者の視点)

「へ~、あんたが赤なのね。よろしく!」

いきなり差し出された握手に、テルヒコは戸惑った。
戦いの後、青い閃光と共に見ず知らずの青年が自分の前に立っていたからである。
普通に生活して接点のなさそうな雰囲気を漂わせるどこか飄々とした青年だった。

「いったい何者だ!俺のことを知っている・・・。」

十字に光るピアスを揺らせ、いたずら好きの少年のような笑顔で青年は笑った。

「ま、これからいろいろと知っていくことになるだろうけど!あんたの大活躍を期待してるぜ!
俺にヒーローの座をもってかれないようにガンバんな!(笑)」

一体冗談とも本気ともつかないカラリとした笑顔と共にテルヒコの背中をパ-ンと叩き、青いデニムの上着を羽織ったその謎の男は一人歩いてゆく。

「なんだあいつ・・・。」

ジャンパーを羽織り立ち上がるテルヒコ。

日没間近。町を出るとすぐそばに広がる廃工場で、これからも続くであろう終わらない戦いを想起し

一人複雑な思いが青年の胸の中を走り抜ける。

「最初の出会いが肝心てなーっ!」

その男、水騎竜(ミズキリョウ)は兄より継承したリューグレイザ―(水神召喚刀)の反応をもとに単身行動を始めていた。

「リョウ~!はやくこい!」

真っ黒くてんころぼしのように日焼けしたパーカー姿の小さな女の子が自販機の前にいたリョウの内膝に蹴りを入れた。

「ぉおハナ!わりぃわりぃ。お前もなんか飲む?」

「なんか飲む?じゃないでしょ。あんたが今日の講師なんでしょ?ほら早く!」

「あーはいはい!ちょっと最近面白いことがあってさ。それで遅れちゃって。」

「面白いっていったいどんなことよ?」

「まーそれは・・・。(一時の無言)・・・フフッ、面白いヤツと・・・あったっていうか。」

「全然わからん。」

「ま、今日の先生はいつになく上機嫌だからそれでよしってことで!な!いくぞー!」

リョウはハナと共にいつもどおり彼らの通うダンススクールへ入っていった。


「しかし、最近のクロウ怪神は以前よりどこかパワーアップしてきている。これは、スクラップじゃないか。」

廃棄物、廃工場の工業製品を取り込み実体化した機械的な容貌を持つ新たなメカ怪神。

「これは・・・現代版の付喪神(粗末にされた道具に命が宿り人々に危害を加えるようになった妖怪)だな。」

テルヒコが創聖した日神オージの破壊したメカ怪神たちのボディパーツから、溢れるドス黒いオイルにまみれ

禍々しい(蟲)だとか(鬼)などの奇妙な文字体で描かれた呪符が掻き出された。

「やはりこの機械もそうだ。ヨダキング(妖怪・件/くだん)の時も・・・・。この霊符みたいなやつが、バケモノたちに生命力を与えていたのか。」

「もしかするとこれが怪神の弱点・・・・!
こいつを研究してみよう。似た札の写真が研究室のファイルに載っているかもしれない!」

日が暮れる市街地の騒めきの中を真っ赤なバイクが走る。

何度もドアの前で気分が悪くなってしまっていた教授の研究室に今夜もやってきた。

あけ放たれ無人となっていた室内。カーテンの隙間から吹く冷たい風が頬にあたる。

残された友人たちの写真。友人の一人だった一宮がふざけておどけた写真。

割れた姿見を見て、テルヒコはつぶやいた。

「じいちゃん・・・・・・。これでよかったのか?じいちゃんはこれを望んでた・・・?」

アマテライザー(鏡)がなければ、自分はどうなっていたんだろう。取り留めない考えがよぎる。

「みんな今頃・・・。」

「あのとき、一体何が起こったんだろう。みんな、今も生きているんだろうか・・・。」

すべてはあの日の夜。一夜にしてすべては打ち砕かれた。

忘れ去られた大切なモノたち。そこから先の映像がどうあがいても浮かばない。

不意に思い出されるその断片の記憶。大学時代、友人たちと大善教授のもとで全国各地を飛び回り

旅していた日々。なにも不安なことも、迷いもなかった。

自分が平々凡々の人間で、きっとその先もそういう日々が続いて人生を終えていくのであろうと当然のごとく思っていた。

あのときが自分にとって最も幸福の日々だったのではないか。テルヒコはそんな過ぎし日の記憶と共に

もう自分がそんな思い出の中には帰れない、戦いの中にいることを強く実感するのだった。

「俺の中には、何もない・・・。」

本当ならば、とっくの昔に気なんて狂っている。

逃げる場所などはない。ましてやそれを理解する者も。

ただ、自分の意志、力だけが信じられる今。

すっかり現状に対し平常でいられてしまう自分の心理状態に恐怖を覚える。

闇を見続けることに慣れきってしまったからなのだろうか。

いや、ほんとうは気づいている。

その感情さえ斬りつける意思で進まなければ、到底これから先すすめる気がしない。

暗闇に浮かぶ鬼を斬り続ける中で、醜悪な人間たちが犯してきた罪が、マガそのものが瘴気となり自分に向かってくる。

それはそれは目を背けたくなるような光景が見えた。

人間の奥底に宿る闇の本質。それに抗おうとする光の意志。

その闘いが反映された、これは生、そのものではないか。

そしてうすら理解していてもたった一人の普通の人間たちの中にこれほどの闇が詰まっているものなのか。

受け入れがたい現実があった。

朝も昼も夜も存在し続けるマガツカミの気配。

いまでも奴らは自分を狙っている・・・・・。

鬼の気配。

それを叩き潰していくうちに自分が、いつしか本当の鬼になってしまうのではないかという予感。

それを滅ぼせと叫ぶ光からの声。

幻の中で今も生き続ける、優しかった思い出たち。

心の奥底に見える、自分を立たせる光の意志。

落ちる一筋の雫と共にその内側に信じられる確かな希望の火が

まだかき消えず残っていることを青年は実感した。

「この火を、消しちゃいけない。」

「奴らはすべて俺が祓う・・・・・・・・。それが、俺にしかできないことだ・・・。」

邪悪に対する強い怒りだけが男を正気でいさせていた。

 

episode.3 ~Encounter~二人の王子

「見てみて、テルヒコくん!すごいわよねあの人!大生部(おおふべ)愛理、またテレビ出てるわね。」

「すごい勢いよね・・・・愛理先生の占い・・・。」

創生プロジェクトのスタッフである真理恵とひなたが、かたずをのみテレビを凝視していた。

「みんな占い好きだな~。ほんとに"そんなもの″が視えているのかなぁ。」

「なに、キミは信じないの?ぜったい本物の超能力者よ!だって」

テレビ画面上に映された巷で話題沸騰中のサイキック占い師”大生部愛理”が、

とてつもない勢いで両手に持つチタン合金製のスプーンをへし曲げ、二輪車をグラスファイバーの外装ごと手刀で一気に一刀両断した。

「ぜったいにやらせじゃないわよ。あの人ほんとにそんな力もってんのよ。不思議な人もいるわよねえ。」

「この人魔法使いかなんかなんじゃないの?絶対そうに決まってるって。今宮崎に来てるんだよね。この女の人。
たしかオーシャンムード(総合レジャー施設)で・・・。」

自分の正体を知るひなたがそんなことを言うのも妙な気がしたが、テルヒコには彼女(大生部愛理)の雰囲気から何か

妙な違和感を感じ取っていた。

「どこの事務所のタレントさんか知りませんがね、あなたみたいなことをする人が平気で地上波の番組に出るから、いかがわしい連中が我も我もと巷にあふれるんじゃないですか!?(テレビに出演しているコメンテーター)」

「いきなりこんなことズバッと言ってごめんなさい。あなたはこの間伊豆の旅館に温泉旅行へ行きましたね。その不倫のことで今奥さんと別居状態。」

「・・・・・ちょっと、・・・そんなことは今関係ないだろ。こんなのきいてねえぞ!なんだ・・・この女!いやそんな、
彼女と旅行なんて行ってませんよ、行ってませんからね皆さん。いや絶対に行ってねー・・よぉ・・・なんだよおこの空気」

「私は透視(リモート・ビューイング)もできるんです。」

仕込みにしてはあまりに寒気のする大生部愛理の的中する透視結果にスタジオ内は凍り付いているようだった。

「は~これホントのヤツよね。すごい修羅場になりそうねぇ。あ、真理恵ちゃんは買ったんだ、そのペンダント・・・!可愛い~私もほしいなあ。」

「・・・・(コクリ)。先生のいる事務所も予約一杯だったんだけど、この間はじめて会えて。
多分このおかげだわ。彼氏と結婚することが決まったの。」

「先生、このチャームを私だけタダ(無料)でくれるって。私の近くにパワーの強い守り神がいるんだって!」

「よかったじゃなーい!ね、テルヒコくん。」

真理恵はひなたのリアクションを見てそれならこんなことも言ってもいいか、といつになく緩んだ顔でさらにこう言った。

「でも、ごめん。職場の気が悪いから・・・」


「厄除けに神棚のお札を捨てて、先生が1万で売ってるお札に変えたほうがいいんだって。」

「え?!そうなの?!うちの神棚氏神さんのやつだけど罰あたんないかしら・・・」

「・・・・」

「テルヒコくん、聞いてる?」

「・・ア、はあ・・・・・・(何か、おかしいぞ)。」

テレビ画面に映る大生部愛理が、レポーターと共に辻切りのように市街地の人々を次々と占ってゆく。

「あなたはズラですね。ポマードの塗りすぎ。」

「えっなんでそれを・・・でも、世のすべてのポマード(※整髪料のこと)がはげるわけじゃないんですよねえ?」

「健康診断の結果が良かったからといって飲みすぎは良くありませんよ。」

「ひなたさん、ポマードって・・・何?」

画面上に映る困惑した男性の顔を見ながら、真理恵はひなたに尋ねた。

次々とリサーチ会社や探偵が下調べしただけではわからないような事実を言い当てる姿に驚く人々。
「突撃!隣の運命デットオアアライブ!」
近所の民家の食卓に、それも食事中直撃して占いを始めるのだから仕込みタレントにしては、ゲリラ演出が過ぎる。

「なんか昔のバラエティを見てるみたいな感じだね~。」
「よくクレームにならないよな・・・・。」
一応最低連絡はされているとは思われるが、その家のスプーンや人力ではどうにもならないであろう電化製品まで手を当てるだけで捻じ曲げ、
お詫びに各家庭にひとつ、番組からのプレゼントとして得体の知れない水晶玉を置いてゆくのだから
見ているこちらがひやひやしてしまう始末であった。

「うう・・・・先生、ありがとう。俺これからはちゃんと働くよ。」

愛理に対し涙を流しながら感謝する暴走族のような雰囲気の不良たち。

「先生サイコー!ありがとぉおー!」
映し出される路上の歩行者天国に謎の蛍光色の服、蝶のTシャツを着た数千人の群衆が
法被を着た大生部愛理を神輿に担いで練り歩いている光景が映し出されていた。

「・・・・・・・・なんかちょっと気持ち悪い。」

コーナー終了と共にスタジオは通販番組のような様相を呈する。

「そんな愛理先生が全パワーを集中させて結晶させた、この天然の九頭龍王の彫刻が刻印された水晶玉!特別に皆さんに超特価でお届けしま~す!」

「でもお高いんでしょう?」

テルヒコはその時、スタジオの女性の声に妙な違和感を覚えた。
「あの女性の声、聞き覚えがある・・・」

「そこを特別にいまならなんと・・・!」

「えーすごーい」

「先生!それ買います!私も救ってください!私もー!」

うんざりするような通販番組特有のテンプレートのやりとりに反するほど、狂喜乱舞し喜び喝さいを送るスタジオ内。

なだれ込みぶつかり稽古のごとく一人一人警備員に制止される観客。
はたからみれば異常な光景であった。

「・・・あの女性の声は、クロウ幹部九尾の狐の声!・・・いや、俺の勘違いか?・・・」

「テルヒコくん、どうしたの?」

「・・・わたし、その先生が想いを込めた特別な水晶玉、買っちゃった・・・・。」

真理恵が見せた携帯の写真の中には、確かにその愛理が販売している水晶が撮影されていた。

「真理恵さん、それはちょっと、俺は・・・。」

「・・・テルヒコくんも興味あるの?」

「あ、ハナちゃ~ん!ひさしぶり~!」

元気な少女の声が画面に釘づけとなっていた三人の意識を現実へと引き戻した。

ドアの前に立っていたのは、ひなたらの知り合いであるハナであった。

「お兄ちゃん今いる?今日は約束してたイベントの当日でしょ?まさか忘れたとかいわないよね!」

「あ、そういや今日だったか・・・。ひなたさん、真理恵さんすまない!俺行ってきます。」

「わたしたちよりテルヒコくんのほうがいいわよね~!」

テルヒコは大生部のことが頭に引っ掛かりつつもハナと共に予定していたそのイベント会場まで向かうことになった。

「おれは頭数揃えか?」

「なに馬鹿なこと言ってんの?いつまでもオジン臭い趣味ばっかりやってるから寛大な心で連れてきてあげてるんじゃない!」

「おれはオッサンじゃない!20代だ!てゆうかキミの家も神社だろう!聖地巡りはれっきとした習慣だ!俺が行くのにも理由があってだなあ。」

「神社のことじゃなくていつもの行動よ!なんで仕事抜け出して水汲みに山に行ったりお坊さんじゃないのに何時間も精神統一したり
本読み漁ったりしてるのよ!服もずっとそれだし・・・。
そういうならもっと若者らしいことしなさいよ!」

「うっそれは・・・」

「いいから行こ行こ!」

「まいったなぁ。」

テルヒコとハナがやってきていたスタジオは、多くのカラフルでハイセンスなストリートファッションの若者で満員になっていた。

「あんまり俺こういうとこ興味がないんだよなあ。」

「おお~今日もいっぱい来てる!テルヒコ兄ちゃんにはこういう刺激が必要なのよ!そうしたら記憶も思い出すわよ!
・・・。ほらいくよ!」

「みんな楽しそうだな。で、そんなに人気なのかその人は。ごめん、俺あんまり芸能人とかよく知らないからさ。」

「とーぜんよっ!お兄ちゃんなんかが地球何億周しても見れないくらい有名なひとがきてるのよ!それにダンスしてるとこなんて超カッコいいんだから!今流行のBTX(韓流アイドルグループ)とも一緒に踊ってるんだから!」

「じゃ、アイドルなのか?」

「正確にはプロダンサーね。ほらほら見て、来たわよ!リョウ頑張れ!」

「あれが・・・」

「キャー!リョウ―!(ファンの歓声)」

女性ファンらしき黄色い悲鳴が聞こえる人だかりのなか、テルヒコは高速で回転しながら空を斬りバック転するその男が

笑顔で爽やかな汗と共に踊る姿を見て驚いた。

「あ、あいつ・・・・・この間の・・・!」

「ね?!凄いでしょ?!うわ~見入ってる!」

「あ、ああ確かにな。・・・・あの男、この前俺に話しかけてきた・・・!」

テルヒコは先日メカ怪神を倒した直後、目の前でダンスする彼と出会っていたことを思い出した。
「ハナちゃんは彼のことを知っているのか?」

「だってリョウは私たちの先生なんだもん!ぜったいリョウのことならテルヒコお兄ちゃんと仲良くなるはずよ。」

ハナも子供ながら、記憶のない自分が立ち直るよう気をつかってくれたのではないか、とテルヒコはその時感じたが、
同時に彼女の挙動不審な様相からなにか妙な感じがしたのだった。

「(以前のアマテライザーの時もそうだ。ハナちゃんは何か隠しているのか?)・・・。」

「ふぅん。楽しそうにやってるじゃない。」

アマテライザーの奥から、通信でテルヒコにユタカの声が音声となり聴こえた。

「っここは人ごみの中だぞ!しーっ!」

「何よ。別にバレはしないわ・・・あの青年のことが気になっているようね。」

「・・・・・」

「聞こえない?気になっているように見えるけど。」

「ぁあ、クロウと無関係だといいがな・・・。」

「この(鏡の)ことは防犯ブザーだとでも言っておけばいいわ。」

「お兄ちゃん、何ぶつぶつ言ってるわけ?あ、見逃した!」

小声で返すテルヒコに、ユタカはハナに声を聞かれる手前そっと通信を閉じた。

「あ、リョーウ!今日もすごい良かったよ!お疲れ!」

全力でぶんぶん手を振り青年のもとへと走りかけよるハナ。

テルヒコはどうすればいいのか複雑な面持ちで彼を見つめていた。
そんなテルヒコに対し読めぬ表情の笑顔で無邪気に笑いかけ白い歯を見せるその男、水騎リョウ。

「・・・フン。ハナからはきいてたよ。こないだはいきなりでごめんな!ほら!」

さっと手を差し出してきたリョウの握手にこたえていなかったことをテルヒコは思い出し、思い出すように即握手を返した。

「キミがハナちゃんの知り合いだったとは驚いた。とても楽しませてもらったよ。」

「(しかしなぜ彼は俺に・・・)」リョウの持つ一見天真爛漫にも見えるフレンドリーな雰囲気に安堵した表情を見せるテルヒコは

満足そうに二人を見るハナの顔を見てさらに安堵するのだった。

「おい、そこのやつ!おまえあんまり調子に乗ってんじゃねえぞ!」

観客の一人だろうか明らかにガラの悪そうな見知らぬ悪羅悪羅系のような
場違いの格好をした男たち二人がテルヒコとリョウが話している場に割り込んできた。

「おまえら何?俺の知り合い?」

「お知り合いだってよwwwwwここはいつも俺らチームが使ってる箱なんだょォ!
こんなオワコンのド田舎で騒がれてるからって王子様気取りしてんじゃねーよ!」

「キャー!だれか、喧嘩よ!」


バシィッ!
「安っぽい地方で悪かったな・・・。」
リョウめがけ飛び出した男の拳を片手でつかんでいたのはテルヒコだった。

「あんだァてめー。」

「こいつも修正されてぇようだぜ?」

はいはいぜんぶわかった・・・というかのように静かにリョウは顔を上げた。

「お前ら、興味があってきたんだろ?
おれさ~、生憎"そういうの”趣味じゃないんだよネ。
これでオッケー?」

そのとき一瞬で天高くジャンプしていたリョウの右足による蹴りがそれまでしつこく粘着していた不良の右顔面に直撃していた。

「ってめえな!」

つかんだ手を振りほどいた隙に付け入るようにもう一人の男の拳がテルヒコのみぞおちにクリーンヒットする。

「!」

「な~んだ威勢がいいだけじゃ・・・?!こいつッ」

「ぉいおい、総合やってる三島のボディブローを、こいつ・・・どーなってんだよ。」

何発腹部と胸部に直撃を喰らっても一切表情を変えずに、焦っているその男をテルヒコは見つめ続けていた。

「・・・・この程度で、やれると思ってんのか。」

ボスッ!
「ッグホオッいったぃ・・・・」ドスッ。

瞬時に放たれた直線的なストレートな拳は遠慮なしに不良の顔面に直撃しめりこんでいた。

「鼻はやったな・・・こりゃあ~、よけい不細工になってかわいそ☆」

野次馬のごとくその様子を観戦するリョウ。

「おぇええっ!ぐぅおええ!・・・・?」

殴られた男が一人地面にうずくまり嘔吐を始める。テルヒコの背後に何かがもやとなり煙が赤黒く登り立っているのを

その男は見た。

「110番!け、警察よんだ!おまわりくるよー!」

後方から大声でハナが叫んでいるのをしっかり聞いていた男たちはよろめきながら立ち去っていった。

「ぅ・・・なんだこいつら・・・おおい立てるか、いくぞ・・・!」

二人が立ち去った直後、テルヒコはハナにびっくりした顔で尋ねた。「ホントに呼んだのか?」

「嘘よー!なんともない?」

「新品のシューズが台無しになるとこだった。よかった・・・援護射撃サンキュー。ハナ。
・・・あんたもなかなかやるじゃん。」

「面倒なことに付き合わせちゃったな・・・立ち話もなんだから、あっちで話そ。」

不良たちが去った後、何も言わず丸い屋外のテーブルにテルヒコ、リョウ、ハナら三人は静かに座った。

リョウはテルヒコに対し美しくもどこか危うさを思わせる切れ長の視線で笑みを浮かべ、ニヤリとこう言った。

「率直に言ってさ・・・・・あんた、〝創聖(そうせい)″するんだろ?」

笑顔の直後冷静な表情になるリョウを前にして、ハナとテルヒコの周囲に一線の奇妙な緊張感が走る。

「・・・・・・・・・!お前、なんでそれを知ってる。」

本気なのか冗談なのか判別できないそんな笑顔で、リョウは続ける。

「なかなか惹かれるよなー、あんな力があったら、俺だったらどうしよう!俺ならああするぞって誰だって思うじゃん?」

「いろいろ知りたいなあと思ってさ、あんたのこと。」

先日のリョウの意味深な挨拶。感じていた疑念はやはり当たっていたとテルヒコは思った。

「こいつ(刀)のこともな。」

テーブルの上にガンと青いその物体をリョウは差し出した。

「こいつは、リューグレイザ―・・・・!(水騎龍/リュウの持っていた・・・!)」

「キミがどうしてこれを・・・・!」

張り詰めた空気の中で、ポケットの中から即座にアマテライザーを取り出そうとするテルヒコ。

「で、そいつ(鏡)のこともな。」

「・・・・・ッ!」

「おりゃ全然ゲームでいうところのビギナーだからな。プレイ時間の長いあんたに聞いたほうが早いじゃん。そうだろ?」

青島の海中洞窟内で、手にした水神召喚刀リューグレイザ―。

リョウはウミヒコ・ヤマヒコ兄弟という神霊のサポートで知り得た知識以外の三神器(それら)についての情報に内心強く興味を抱いていた。

「そいつを持っていたら・・・危ない。俺に渡してくれ。」

「おっと(自らの神器を取り上げ)、そういうわけにはいかないんだな~。
ついに俺も変身できたんだモン、あんただけじゃ力不足なんじゃないの?」

ピリリと張り詰めた空気を和ませようと咄嗟にハナが割って入る。が、余計に空気を複雑にしてしまう。

「お、お兄ちゃん、これは!リョウはあの、ヒーロー物が好きなのよ!特撮ヒーローの大ファンなんだよ!
御面(ゴメン)ライダーとかヌルトラマンとかハイパー戦隊とかバーベルとか好きだから興奮しちゃって…、
お兄ちゃんも一応ヒーローじゃない!
だからテルヒコ兄ちゃんが創聖者っていうことも・・・。」

「それに、ハナちゃんもどうしてそれを知っているんだ?・・・二人とも一体・・・・。」


一方クロウ本部において白と黒の仮面をつけた二人の怪人(九尾の狐と石上)が怪しげな妖気の中恐ろしい計画を実行に移そうとしていた。

「占いはいい。財閥や政界の連中、芸能界も・・・
我々のクロウの暗黒呪法によりみんな人心掌握されちゃっている!」

「人間世界の言行一切は我々の手の中におさまってるといっても言いすぎではない。
お前も人間どもの最新の流行はちゃんとチェックしているのだな~。」

「時代がどんなに変わっても、人間たちは変わらないよねェ、石上。絶対かなうわけもない夢や、
己の欲望のために身を粉にして働いてくれる・・・。
こういう連中が多ければ多いほど、僕らは非常に助かるんだよね。」

「愚かな人類は昔から、見えもせぬ己の幸福や未来の安泰のため、占いという下等な呪法に手を染めてきた~!
時代によって手を変え品を変え、名を変えながらリバイバルされてきただけだ。」

「何の神が・・・・悪魔が力を与えるか、知りもしないのに惑わされる。
その心情はひとかけらも変わっていない!ほんと~に馬鹿な奴らさ。」

「人知を超えた力があれば無分別に群がる蛍光灯の蛾ども!
・・・それが誰でも己の利益となるモノのみを神と思う不誠実さ、人どものおぞましい醜態だなあ。」

暗黒渦巻く本部内、テーブルの上に置かれた大きな料理蓋を九尾の狐が指さしつぶやいた。

「その正体は・・・・こいつさ。」

開けた蓋の中にいた動く"それ"を見て石上は息をのんだ。

「これはなかなかコアな・・・意外なチョイスだな。」

「だろ~?そんな人間どもにふさわしい姿に、これからなってもらうよ!コーン!」


真っ白いテーブルを囲み、三人の神妙な空気は続く。
終始ライトなテンションで話し続けているリョウ。どうにか場を収めようと気をもむハナ。

「俺と手を組もうって話。別にそう悪い話じゃないと思うんだけどな!」

「私がさっき言ったことは、その・・・」

テルヒコは、リョウとハナ二人の顔を見て、息をつき静かに言い放った。

「キミたちは、俺と関わらないほうがいい。」

普段と違ういつになくあまりに真剣な表情に、ハナは言葉を挟むことができなくなっていた。

「どうしてそんなせっしょーなこと言えちゃうわけ?ずいぶんなやつだな~。」

冷静な表情でリョウが尋ねる。

「キミには自分の居場所や大切なものがあるだろ?悪いようには言わない。はやくそんなモノ(神器)は手放したほうがいい。」

「これは遊びじゃないんだぞ・・・!」

「じゃ、どんなことをすればオッケーなわけ?ぜったい面白くやれると思うんだけどなあ。」

「・・・お兄ちゃん、リョウは、すっごくいい人なんだから!だから」

「・・・ならなおさらだ。そのリューグレイザ―についても知っているんだろう。命が惜しくないのか?
それにキミ、それをどこで手に入れた?」

「教えてやってもいいけど、あんたがそうなら・・・どーしよっかなー♪」

「すまない、時間をとらせたな・・・。俺はこれで失礼する。ハナちゃん、行こう。」
テルヒコはいつになく深刻な顔で、リョウから目をそらしハナの手を引こうと席を立った。

「お兄ちゃん・・・・・。なんで。」

「おいおい、行くのかよー!ちゃんと俺の話、考えといてくれよ!」

ハナの手を引いたテルヒコは立ち止まり、何とも言えない表情で言った。

「キミには君を待っている日常がある。キミを待っている人たち。その人たちを感動させたり、喜ばせるために踊っているんだろ?
なら・・・それで充分幸せじゃないか。それをなんで・・・。」

「俺とかかわったヤツは、必ず不幸になる。」

かつてテルヒコの前にライバルとして現れ、己のやり方でマガツカミと戦おうとした青のオージ(水騎龍)の存在。
クロウの手により改良がくわえられ復元された神々の神器であるリューグレイザ―は、普通の人間であったリュウの肉体を蝕み
最終的には暴走を引き起こしてしまった過去があった。

自らの親友でもあるリュウの暴走を自らの手で、その拳で止めようとしたテルヒコにとって
目の前で玩具のごとく無邪気にリューグレイザーを振り回すリョウを見て、
なるべくこの一般市民をこの物騒な件に関わらせたくないという気持ちが募るのは当然であった。

その言葉を聞いてリョウはテルヒコの背に返した。

「格好つけんなよ~。」

「あんた、そんなこと言っといてこないだ(前日)・・・捨てられた犬みたいな顔してたぜ。」

その言葉を背に受け、一人静かに肩を振るわせてテルヒコは心配そうなハナを引き連れ歩いていった。

「ッ、俺とキミは違う・・・・・・・・!」

「ごめんリョウ!あとでテルヒコ兄ちゃん説得しとくから~!またね!」

テルヒコの背中を押すハナの活発な姿を見てリョウはいつものように笑い彼らを見送った。

「まったく~。ハナも一丁前だよな。いったいどっちが大人で、どっちが子供なんだか。」

「ま、最初の最初はこういうもんだよ、な。アニキ。俺たちうまくやれると思うぜ?」

リョウは亡き兄、水騎リュウの託したリューグレイザ―に微笑み語りかけた。

その直後、イベント会場から二人の女性が慌てて飛びだしリョウのもとへやってきた。

「ちょっと!さっきの奴らが・・・・」

倒れた二人組の男。先ほどテルヒコとリョウに因縁をつけてきた男が地面にうずくまりもがき苦しんでいた。
「おーい大丈夫かー?ちょっと大げさな・・・?!」

男の首からは謎の禍々しい文字と思しき刺青のような刻印が浮かび上がった。

「なんだこりゃ・・・・」

「省吾!しっかりして!・・・・うそ、こんなタトゥ無かったのに?!もしかして・・・」

「おいミカ、そいつ・・・」

男の女友達らしき女性が首からぶら下げていたネックレスのなかから、ガラガラゴロゴロと謎の異音が響く。

「グルル・・・・・!(リューグレイザ―)」

「リューグレイザ―!どうした?!(リョウ)」

リョウのリューグレイザ―がいつにない声で唸る。その声と波動にかく乱されるように

男たちは苦しみ出し、リョウは咄嗟に男たちのペンダントを勢いよく蹴りつけた。

「きゃ、なにするのよ!・・・・・きゃーーーーっ!(女性)」

「・・・これ・・・(リョウ)」

男たちのペンダントの中に入っていたのは、醜い緑の蟲。アゲハ蝶の幼虫だった。

「俺には理解できない趣味だな~・・・あんたもそう思うだろ?(リョウ)」

リョウの隣にいたのは、先ほど立ち去ったと思われたテルヒコとハナだった。

「ああ。ちょっと待ってくれ。(テルヒコ)」

テルヒコはポケットから取り出したアマテライザーをその虫にかざすと、黄色い光が照射された。

「ユタカ、こいつの正体を教えてくれ。(テルヒコ)」

「・・・・・・・(ユタカ)」

「おい、緊急事態なんだぞ!ユタカ!(テルヒコ)」

「さっき黙っておけと言ったじゃない。・・・これは常世の神ね。間違いないわ。(ユタカ)」

「常世の神?!(テルヒコ・リョウ・ハナ)」

「日本書紀にも出た真っ赤な偽物の神よ。かつて富士川のほとりで暮らしていた大生部多(おおふべのおお)という人物が
この虫(アゲハ蝶の幼虫)を神だと謳って人々に信じさせたの。(ユタカ)」

「でも、これただのキモい虫じゃないのよ。こんなのなーんの御利益もないでしょ?(ハナ)」

そそくさと鏡に近寄りのぞき込むハナの横顔へユタカは冷静に答える。

「そもそも、ご利益目当ての人間を助ける都合のいい神などいないわ。いるとすると(ユタカ)」

「マガツカミくらいだろうな。(テルヒコ)」

いつものごとくアマテライザーからの反応に一人こたえるテルヒコ。

「その人物は大生部っていったんだよな、大生部(大生部愛理?!)・・・・・・・・!」

「これ、先生の呪いなのかな?愛理先生のペンダント・・・。省吾最近すっかり人が変わっちゃって。
彼が先生のこと信じなかったから!・・・どうしよう!(女性)」

「おいそれ、どういうことだ?!あの女占い師か?・・・やはりこれもクロウの仕掛けた作戦か!(テルヒコ)」

「ハナちゃん、そこで待っててくれ!すぐ戻る!(テルヒコ)」

きがつけば、テルヒコのアマテライザーのやりとりを眼にした事件の野次馬たちが数人群がっていた。
「すげーな、それ(鏡)いったい何?(群衆の声)」

「防犯ブザーだ!(テルヒコ)」

テルヒコはバイクにまたがり大生部がいるオーシャンムード(総合レジャー施設)まで急行した。

「・・・・・・キミもなんで?!(テルヒコ)」

テルヒコがフェニックスロードを走り抜けるさなか、隣を同時に並走していたのはリョウの青いバイクだった。

「俺たちも置いてけぼりなんてごめんだぜ。なあハナ?(リョウ)」

「そーいうこと~!(ハナ)」

「ハナちゃんまで乗ってるし・・・・事故ったらお前・・・!(テルヒコ)」

「オンロードって意外だな。ヒーローは決まってオフロードだろ~!かっとばすぜ~!(リョウ)」
(※オフロード=荒地などでも走れる走破性の高いバイク。モトクロスなどで使われる。オンロードはスピード重視の公道・レーサー用バイク)

宮崎市街近郊にある総合レジャー施設、オーシャンムード。屋内に本物の海を模したプールや
巨大アトラクション、海に映し出される立体映像などが楽しめるバブル期に建設された本県においても有数の娯楽スポットである。
2000年台中盤に経営が立ち行かなくなり解体されることが決まっていたが、奇妙なことに解体される直前に存続が決まる。

存続は決定したものの娯楽施設ではなくなり、テナントを様々な企業へと貸し出すイベントスペースとなり生き残ることとなった。
以降何年間も近隣の住人でさえもよりつかなくなるような謎のスポットとしてオーシャンムードは形を残すこととなった。

「・・・ここが大生部愛理という女のいる場所か」

「しかし誰もいないのはおかしいな、結構有名じゃないか、あのアイリとかいう人。ほら!」

リョウが取り出したスマホのyoutude動画には大生部が映っていた。

「ネットの世界でも人気なのか・・・・。(テルヒコ)」

「わたしのクラスでも好きだっていう子がいるけど、私なんだか気持ち悪いって思ってて。チャンネル登録しないでよかった~。(ハナ)」

「子供たちの中でも知られてるんだな・・・。(テルヒコ)」

「神器の反応を悟られないようこちらからは通信を切るわ。(ユタカ)」

テルヒコら三人が会場屋内に向かい階段を上ってゆくと、その扉は開け放たれていた。

「ほんとに異様だな。もし万一ということがある。ここからは俺が行く。リョウ君、キミはこの子(ハナ)を頼んだ。(テルヒコ)」

「・・・しょうがないな。わかったよ!気をつけろよ。(リョウ)」

「リョウは意外とこういうの信じちゃう方だからね!やめといたほうがいいよ。(ハナ)」

「それとこれとは関係ないでしょー!お前もお化け屋敷苦手だろ?!(リョウ)」

「あれは音が苦手なだけだよ!あんなん作りものじゃない!(ハナ)」

「・・・・それはいいが、二人ともちゃっかり俺についてきてるじゃないか・・・。(どうしよう・・・)(テルヒコ)」

真っ暗闇の室内は想像以上に狭く、バロック調の椅子に座る大生部愛理の姿がスポットライトに照らされていた。

人気占い師の開催するイベントにしてはあまりにも陰気臭く、スポットライト頭上には無数の虫たちがたかり騒がしくぶつかり合っていた。

「よくぞお越しくださいました、私の鑑定ルームへ。あなたの最も欲するところの、願いを教えてください。(愛理)」

「・・・すべての人を、一人でも多くの魂を救うこと。(テルヒコ)」

「それは素晴らしい願いです。ですがあなたの魂はあまりにも傷つき汚れ切っています。(愛理)」

「終わることのない暗闇が見える・・・・・・・・。あなたは戦い疲れ、その心は限界を迎えようとしている。(愛理)」

その頃リョウとハナは完全にテルヒコと暗闇の中はぐれてしまっていた。

「どうなってんだよここ!さすがオーシャンムードを改装しただけはあるな!ひろすぎてわかんねえ!(リョウ)」

「おーいテルヒコにいちゃ~ん!(ハナ)」

「あっ、リョウ!・・・・あれ見てよ!キャっ!(ハナ)」

「ちょっとそこで待ってろ・・・確かめてくる。(リョウ)」

「グルルるるるる・・・・・・・・・(リューグレイザ―)」

暗闇の中スポットライトに照らし映し出されていたその光景は、あまりにショッキングなものであった。

「こりゃ、人間じゃねえか・・・。」

うめき声と共にのたうち回る奇怪な姿の人間たち。1人には蝶の羽のようなものが生え、標本のように
巨大な杭で磔にされていたのである。

「うっわあきっしょ!」
無数に地面を這う虫が奇怪な姿の人間たちの周囲に蠢いていたのを見てリョウは戦慄した。

「・・・貴様・・・私のお楽しみを覗きみたな~?カァアアアーッ!」

そこはかすかに実験室か何かのようにさえ思えた。
血に濡れたメスを持ったその男、石上が暗闇の中から黒いペストマスクを揺らし現れる。

「好都合じゃん!それ相当の対戦相手がいなくっちゃあはじまんねえからな!(リョウ)」

「こんなところに丸腰で来るわけないでしょ?!(ハナ)」

すかさず自らの神器、リューグレイザ―(剣)とサクヤイザー(勾玉)を取り出したリョウとハナは石上に対し
瞬時に戦闘態勢の構えをとった。

「・・・貴様ら、いったいどういうことだぁアーっ!(石上)」

そのころ、大生部愛理と対峙するテルヒコは闇の中問答を続けていた。

「わたしには、あなたの魂が暗闇に堕ちゆくのが見える。
あなたは大切な人を失い、そしてその時の想いがあなたを駆り立てる理由になっている・・・。違いますか?(愛理)」

「あんたは俺の祖父の話をいっているのか?(テルヒコ)」

「・・・おじいさん・・・。いいえ、もっと深い記憶。・・・それよりあなたがもっと・・・・??!!(愛理)」

「もう一つ、大切な願いを言い忘れていた。(テルヒコ)」

「??!(愛理)」

「お前らのような奴らを一匹残らず祓うことだ。(テルヒコ)」

「貴様・・・・・(愛理)」

それまで赤紫の刺繍が施されたローブに身を包んでいた大生部愛理の爪が、人間ではない魔性の物へ、生々しい音を立て変化した。

「俺の過去を覗き見たようだが、ほんとに"力"はあるんだな。だが狐憑きとたいして変わらない霊力だ。(テルヒコ)」

「そんな手品、三日で聴衆に飽きられるぞ。(テルヒコ)」

「うっるさいねえ、私の言うことを聞かない人間は、みんな地獄に堕ちるんだヨォオオッ!・・・・・(愛理)」

拍手と共にどこからともなく九尾のいやったらしい透き通った声がアナウンスとなり聞こえてくる。

「不十分で申し訳ないね。キミを欺くにはそいつはあまりに捨て石すぎた。(九尾の狐)」

禍々しい極彩色に彩られたアゲハ蝶の怪物(常世蟲大アゲハ)のような姿となった愛理は、狂気の中テルヒコに襲い掛かる。

勢いよくテーブルを天井に蹴り飛ばしたテルヒコはアマテライザーを勢いよくかざし創聖する。

「創聖!(テルヒコ)」

「ソウセイセヨ・アマテライジングパワー。(アマテライザー)」

「シャイニングフィールド!」

オージが創聖された直後、放たれた光が会場全体を包みオーシャンムードのイベントホールは日中のような明かりに包まれた。

「・・・・・あれは!(テルヒコ)」
その直後、巨大な蒼い斬撃がホール天井に走り、オーシャンムードは開けっ放しの屋外プールがあった全盛期のように
天井に大きな空間が開き、空から日の光が室内に差し込んだ。

「そんなに陰気臭くっちゃあ面白くない!これで三人そろったな!ハナ、テルヒコ!(リョウ)」

「・・・リューグランサー!青のオージ!(テルヒコ)」

「おいそこのなんか変な黒い怪人(石上=カラス男のこと)みたいなやつ!ちゃんとこっち見ろ!そうそれでいい!
俺は新たな青のオージ!水神ジャスティオージだ!(リョウ)」

「そんなこと、知るカァアアアーーーッッッ!(勢いよく羽を広げ向かってくるカラス男)」

「わからせてやるぜ!タアアーーーっ!(リョウ)」

鮮やかに空中に飛びあがり回転したリョウから放たれた蹴りは、古びた室内プールの水しぶきを浴び勢いよくカラス男の
胴体に連続で炸裂した。

「ドラゴンウォーター、ミサイルキック・・・!」

ドスーン!
「決まったぜ・・・・俺が命名した必殺技第一号・・・・!(リョウ)」

「お兄ちゃん、ごめん!(ハナ)」

いきなり頭上からピンク色の光の弾が飛んできたかと思えば、テルヒコの目の前に見たことのない黒い戦士が煙を吹く桃色の長銃を抱え
立っていた。
「・・・痛!いった!(弾が一部かすめる)・・・・お兄ちゃんって、キミは・・・(テルヒコ)」

テルヒコの後ろに倒れていた大生部愛理であった“その怪物”はよろめきながら奇声を上げ天高く飛翔した。
「やるじゃんかハナ!ナイスプレーだ!(リョウ)」

「なに?!あれは、ハナちゃんなのか!(テルヒコ)」

「いや、俺はあの戦士を覚えている・・・・・・・・あれは確か・・・・(テルヒコ)」

「姫神サクヤ?!どうしてあんなところにいるの?!(ユタカ)」

「サクヤ・・・(テルヒコ)」

「いっけええええ!!(ハナ)」

ハナが姫神サクヤの長銃(ガトリング砲)、フローランチャーを連射するその気弾の中
弾をすり抜けるようにその隙を縫うコンビネーションで水神オージが彼の持つ竜王剣ドラグブレイカーで
愛理の変化した大アゲハを斬りつけてゆく。
「いくぜ兄貴。次はこいつだ!アクアスティンガー!(リョウ)」

「・・・キェエーーーッ!(愛理/大アゲハ)」

大アゲハの毒気、妖気に包まれた鱗粉がトンファー、アクアスティンガーを振るおうとしたリョウの全身をとらえた。
「ッぐあああっ!(リョウ)」

ドサッ。

地面に叩き落されるリューグランサー。
黄色い鱗粉をまき散らし空を舞う4メートルはあるであろうグロテスクな大アゲハ蝶の生々しさは、およそ美とはかけ離れたものだった。
「いたた、やっぱりこれ(アクアスティンガー)俺に向いてねーのかなー。・・・しっかしあれで蝶かよ、グロいなあ。」

「世界を滅ぼすほど欲望を吸った常世の神の真形態!(カラス男)」

「なかなかのチート兵器だ!エクセレントだよ大生部愛理!最高だ!(九尾の狐)」

「ーーーーーーーーーーー!!!!!(愛理/大アゲハ)」

急激な、常世蟲への身体変化の影響で人間としての声帯を失い声にならない失望と絶望を主張しようとする愛理。

「新しい自分に、美しい姿になりたかったんだろ?
キミが手に入れたかった欲望の全てが、その肉体に詰まってるじゃないかーハハハハハ!(九尾の狐)」

「新たなマガツカミを産みだす計画のおっぱじめとしてその女には十分働いてもらった。
その女の売りさばいたアイテムは人の精神を依り代へと封じる力があるのだ!(カラス男)」

「もっともあれはただの虫だ。常世の神なんて存在しない。(九尾の狐)」

「幸せになれる、そんなまやかしに騙されて・・・手に入ってもいつかみな消える!
すべては一時のまやかしだ!この世にそんなものなんてないんだよ!(九尾の狐)」

「ハアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!(テルヒコ)」

ビシュっ!

日神オージのアポロンソードが大アゲハの片方の羽根をかすめた。

「!!!(大アゲハ)」

「ターゲット照準。マリナーズ、スプラッシュ!(リョウ)」

水神オージの神技、マリナーズスプラッシュが大アゲハのボディに直撃し、愛理の精神にさらなる激しい混乱と動揺が起こる。

「私たちもぼさっとしていられないわ!神技を決めろ!最大出力で飛ぶわよ?!(ユタカ)」

「できるか?!(テルヒコ)」

「神器の力を試すとき。せっかく三人そろったんだからゲン担ぎよ!(ユタカ)」

時間稼ぎとばかり遠距離より大アゲハを撃ち続けるサクヤ。

「はやく!隙ができてるうちに!(ハナ)」

「うぉーーーーーーーーーーーーッッツ!(テルヒコ)」

「行け!決めろォオ!(リョウ)」

テルヒコをスラスターの出力全開で押し出していたのは水神オージ、リョウだった。

「リョウ、助かる!こいつでどうだ!(テルヒコ)」

日神オージのテラセイバーが空中の大アゲハの脳天にエクスカリバーのごとく突き刺さった。

「救世神技!サンシャインズストライク!!!諸々のマガゴト罪穢れを、祓えたまえ、清めたまえ!(テルヒコ)」


「ア゛アアア゛アア゛!!!!!!!(大アゲハ)」


舞い散る鱗粉と共にその巨大な禍々しい姿のアゲハ蝶は空の中に消失した。


「よかった!みんな大丈夫みたい。(ハナ)」

戦いが終わり、オーシャンムードの中で実験材料にされかけていた人々は
無事そのほとんどの人数が解放されたかのようだった。
だがリョウたちが見た怪物化の進んでいたであろう人間たちがその中のいったい誰であるかということを
テルヒコたちは確認することがついにはできなかった。

「くそー!あの女俺のこと騙しやがって!もうちょっとで大台に乗れるところだったのによ!(男)」

「訴えてやる!あの詐欺師!(女)」

ギャンブルのことだろうか。自らの願いが、幸福がかなわなかったことを嘆き悔しがる人々の声が聞こえた。
それまで彼女(大生部愛理)を信じていたであろう常世の神に惑わされていた人々の姿があった。

「かわいそう。みんなただ信じてついていっただけなのに。(ハナ)」

テルヒコのアマテライザーから響くユタカの声。

「ほおっておけばいいわ。あんな連中は。(ユタカ)」

「・・・?!(リョウ・ハナ)」

「だってそうじゃない。幸せになりたいという願いも、見境がなくなれば醜い欲望よ。(ユタカ)」

「ある意味、自業自得よ。(ユタカ)」

「ま、アマテライザーにそう言われちゃかたなしかもな。だけど幸せになろうとするから頑張れるってこともあるんじゃねーの?(リョウ)」

「どんな理由であっても、幸せを求める人々の想いに付け入る奴らを。クロウを俺は絶対に許さない。(テルヒコ)」

「助かったよ、二人とも。(テルヒコ)」

「礼は要らないよ。だって俺たちこれからチームってことだろ?(リョウ)」

「・・・・それは、(テルヒコ)」

その時テルヒコの心の中に一瞬自分でも気づかない感情が芽生え始めていた。

「(仲間・・・・・・。)」

「教えてくれ、ハナちゃん。そしてキミのこと。一体何者なんだ?!(テルヒコ)」

「言い忘れてたな。俺の名前は水騎リョウ。あんたがダチだった水騎リュウの弟だ。これからよろしくな!相棒。(リョウ)」

 

(新作製作決定!エピソード「ENCOUNTER~二人の王子~」のオリジナルイラスト)

episode.4 ~Legends~最後の約束

あの日から半世紀以上が経った。

部屋の窓の外じゃ子供たちが元気いっぱいに、あの日の私らと変わらない表情で遊びまわっていた。

「いま令和、ええと西暦2000何年だっけ、」

「ばあちゃん、令和はとっくの昔におわってる!」

会いに来てくれた子供たちも変わらず私たちに元気をくれる。

あまりに昔起こった出来事に心を向けすぎていたせいか。今の元号を忘れてしまうなんて。

今でも、当時のことは私自身が一番よく記憶している。みんな若かった。いろんな人と出会った・・・・。だけれど、みんなまるで夢のように私たちの目の前を走り去っていってしまったの。

彼のベッドの横にはいつも、生前彼が手放さず持っていた歴戦の神器が置かれている。

彼の寝室の花瓶の水を変える。十年前なんかは神器の力の影響でかなり体力的にも健康的だったんだけど最近体調が優れないからかこうやって私が見舞いに来ているの。

「先生、彼の容態は大丈夫ですか?」

「本当に驚いてますよ。脈拍も安定してる。一週間前まではあんなに悪かったのに、なんでこんなに変わってるんだ・・・・?!」

担当の医療スタッフ、看護師らが目を丸くしながら私に小難しい医学用語をかみ砕き優しく解説してくれた。

「リョウ、聞こえる?私がわかる?」

「・・・・(ハ・・・・ナ・・)」

私をよんでくれているのだろう。相変わらずの口元。変わらずの笑顔でニヤリと彼は私を歓迎してくれてるようだった。

「ねえ、こっちは台風の被害はなんともない。みんな相変わらずだよ。」

「(微笑む彼の顔)・・・・。」

「そういえば、て・・・・」

「寝ちゃったか。」

あれから60年の月日が過ぎ、世界は変わった。だが、変わってしまった世界の光景のなかで、私とリョウだけは違和感を感じ続けていた。

リョウの寝顔を横目に、私は過去の記憶を思い返していた。組織クロウとの埼玉鴻巣市での戦闘後、時空の裂け目から私とリョウはそれぞれ別の地に脱し再会したのは1ヶ月くらい後になってからであった。本当に奇跡としか言い表せないくらいのタイミングでまた出会えたことに本当に私はそれから10年くらいはその体験の話を知り合いに耳にタコができるほどしてしまったものだ。

讃岐の邪神アクルとの決闘。リョウは己の命を引き換えにするつもりで私たちに最後の力を貸してくれた。

すべての怪神は倒された。すべての決着はついた、はずだったのだ。

そのはずなのに。

なにかが違う。それまでの日常とは。

戦いの日々のあとに勾玉、サクヤイザーは実家神社に無事奉納されついに私の代で現時点のサクヤとしての使命の悲願を果たすことができた。

だが、全くマガツカミが存在しなくなったはずの美しい「青い空白い雲」は「どんよりと暗い」。

どう言えばいいんだろう。とっても綺麗なはずなのに。私が歳をとり感動する機会が減ってしまったから?そんなはずはない。今でも私の目の前の人たちは明るく輝いてみえるのだから。

ならば、どうして?美しいはずの世界に感じる既視感。何者かが(まだいる)と拭い去れない不気味にすら思える違和感。

それだけじゃないの。

私の中にあった思い出。リョウの記憶の中に確かに存在していた「彼」の姿がそっくり抜け落ちてしまっているのだ。

それだけが唯一気にかかる。

私の夢、幻の中に現れた彼の記憶。ビジョン。

私たちは、かつていっしょにそこにいた。

それなのに、何処へいってしまったんだろう。

「日下部さん!水騎さんの様子が?!」

看護師が私を呼びに血相変えて走ってきた。
「香さんどうしたの?」

「実は・・・・!2週間ぶりに」

「彼が喋ったの?」

「リョウ!」

私がチューブに繋がれた痩せたリョウのいる寝室に駆けつけた時、その頬には一筋の涙が溢れていた。

「ハナ・・・・。」

涙に濡れた頬を私はそっと手で包んだ。
私は驚いた。
私の手を強く、彼は握り返したのだ。
力がなかったはずのその手で。

「・・・・来てくれたよォ、相棒が。」

「・・・・リョウ、相棒・・・・!、まさか!」

わたしは全力でとり止めない感情を整理できずに走った。まだいるはず!そこに・・!

その後ろ姿を追いかけ、記憶の階段を裸足で蹴り散らして意識の深層へ下って。

施設の外はもう雪だった。

しんしんと降り積もる白い景色のなか、桜の木の前に私たちが探し歩いた彼はいた。

「お兄ちゃん・・・・!」

ウエーブがかかった髪に
景色に埋もれるような白い服。
なにも変わらないテルヒコ兄ちゃんの当時の姿。残酷なまでに止まっていた刻(とき)ー。

彼は目を潤ませながらシワだらけになった私の目を真っ直ぐ見つめ、何かを言い残したかのように頷き、消えてしまった。


子供だったころの私は、大人になっていた。

だけど、だからわかったのよ。

「いまでも戦っているのね・・・」

私は立ち上がることができなくなっていた。

「・・・・リョウ!」

リョウが自分の意思で立ち上がり、私の側に来ていたのだ。

シュウウ・・・・。

静かに煙を立て、リョウの神器は砂となり、光の粒になって消えた。リョウは本当に眠った。私は彼を抱きかかえ消えていった光に私たちの想いを乗せた。

「ありがとう、リューグレイザー。これまでリョウを守ってくれたんだね・・・。」

いまでもきっとどこかで戦っている。

お兄ちゃん(日神オージ)は。

彼はその魂を載せてー!

episode.5 夢幻のなかで宛てた手紙

時はさらに古の頃にさかのぼる。

平安時代末期。

奈良県高市郡は明日香村に今でも存在するのちのクロウ大和本部。

かつての日本の中枢でありクロウがかつて陰陽連特務機関、カラス会と呼称されていた時期より存在した霊場である。

都が陰陽連の手により着実に整備されだしたころ、霊的なバリアーともいえる結界の力、

各地の神社に鳥居が建立されたのもこの時期からであった。

巨大な霊波、地場のもとそびえる大和のとある地下にて

その神器、八咫鏡(やたのかがみ)は妖しく輝き、

見つめるものたちの眼にその光景を映し出しているのだった。

平安の終わり。最先端の霊的呪法のすべてが結集したこの地で、敷地内の玉砂利を蹴散らし、一人の青年が

聖徳太子の産まれた菩提寺である橘寺に血走った瞳で乗り込んできた。

「どけ!テメエら雑魚に用はねえんだ!」

ぼろぼろに汚れくすんだ白い着物を着崩した、無造作なヘアスタイルのその青年は天高く飛びあがり
寺に集う数十人の狩り衣をまとった男たち目掛け勢いよくその拳を叩きつけた。

「こ、この小童(ガキィイ)・・・・・何者だ!」

「どの寺の小姓(こしょう)だ!名乗れ!送り返してやろう!」

「・・・・こ・・・・・こやつ!このあいだ確かに討ち殺したはず!死人が息を吹き返すなど・・・・。」

数人の男たちに取り押さえられそうになるも、その青年照彦は半狂気じみた勢いにまかせ
何度も何度も狩衣の男どもを馬乗りとなり殴り続ける。

「ぐああっ!」照彦の右腕に激痛が走る。

「モエンフドウオウ、ナミキリフドウオウ、キチジョウミョウフドウオウ・・・・」

後方よりまるで精妙に動くロボットであるかのように狩衣の男たちが呪文めいた謎の言葉をまくし立て始める。

一連の騒ぎによりひっくり返された珍妙な臭気を放つ香炉から溝鼠色の煙が煙幕となって

この上ない不快感と、グロテスクな妖気となり漂っていた。

「うちしき(打ち式)、かやししき(返し式)、まかだんごく、けいたんこく(計反国)と、
ななつ(七つ)のじごく(地獄)へうち(打ち)おとす(落とす)。

おん・あ・び・ら・うん・けん・そわか。」

「マガリタマエ・ケガレタマエ!」

その腕に広がるドス黒い痣の中から、見たこともないような不気味な蟲のような腫瘍があふれ出、青年の皮膚の腕で暴れ踊った。

「慣れてんだよ、痛みにはッ、うぐっ、あァアアーーーーーーーーーーっ!」

腫瘍をもう片方の手で引きちぎると、傷口は急激な速さで修復された。

「こやつ、人外の者・・・・・もしや・・・・?!」

青年は両手を下方に合掌させ手印をつくり、

臍下丹田に自らの精神すべてを結晶させたその声で勢いよく男たち全員目掛けうち放った。

「道返玉!(ちがえしのたま)ァアー――――ッツ!!!」

本殿頭上に巨大な10メートルはあろうかというサイズの磨き上げられた巨大な岩石の球状の物体が

突如として落下する。

巨大な球(道返玉)が建物そのものを押しつぶし、瞬時に狩衣を着ていた男たちのほとんどの姿が消え

庭園に無数のヒト型をした紙片、呪法に用いられる所謂ヒトガタが散乱しているのを彼は見た。

「・・・・・なかなか、うまくはいかねーな。」

瓦礫の中、球に敷かれた足を引きずりながら
血にむせぶその男は、本部の損壊を生き延びた術師の男たちに対し変わらぬ血相でにらみつけ言い放った。

「すっかり面も割れてるようだし・・・。
あんたらにはたっぷりとこないだの礼をさせてもらうぜ!」

じりじりと彼らの距離は縮まってゆく。

「道返玉・・・我ら物部の十種・・・呪法。鴉天狗の真似事か!」

「ガキのくせにィ、どの山の験者(げんざ)だ!」

「我々とおなじにおい・・・。」

「いっしょにするなよ・・・バケ蜘蛛ども!(テルヒコ)」


勢いよく手刀で空を裂いたその時、半壊した建物の奥から無数の人骨とはだけた着物姿の女、乳飲子たちが
唖然とした表情で現れた。
「早く行きな・・・!やはり俺のアテは外れていなかった・・・・。
血の味を覚えたらもう人間ではいられなくなる。鬼の仕業という噂もふたを開けばこういうことだ。
都を魔境に改造しようなど・・・。」

「どの流派かはしらぬが、※朝敵は我々陰陽連が総力を挙げ潰す!
子々孫々末代未来永劫まで滅ぼすのみだァア!」
※(既成権力に敵対するものという意味)

「白々しく・・・。俺はそんなもんに興味はねえ!殺してみろよ!生憎慣れっこだ・・・!」

「こうしてやるよッツ!」

照彦がうちはなったその拳の先端にしたたる、ジュースの如き粘質の不気味な体液。

「貴様~・・・。・・・よほど、遊ばれたいらしい・・・!」

テルヒコに殴られた男の頭部は、変貌していた。

青年により殴打された頭はすでに人間の相ではなかった。
土蜘蛛の艶やかな複眼は昆虫、爬虫類の持つ本能めいた行動原理によりらんらんと輝いていた。

「うっむご、ごいぅああああああ!!」

奇怪な音をたて、緒を引く体液とともに無数の触角、節足動物の四肢、間接らしき生体が男どもの背中から現れる。
その悍(おぞ)ましい容貌、およそもう二度と元には戻ることができない、人としての認識と理性の一切を忘れ去った
本能と衝動のみに突き動かされる姿がそこにあった。

「ぉい、お前ら・・・・・・・・・・・・・。」

「なんでそうもいとも簡単に捨てられるんだよ!人間の姿を・・・!」

その空間には、もはや青年をのぞき誰一人として人間であるものはいなかった。
己の任務密命のためならば自らの存在意義さえ軽微にうちすてられる闇からの使者たちがそこにはいた。

「そんなにいいかよ、バケモノであることが・・・・・・・どうして、
・・馬鹿野郎、・・・・バカヤロォオーーーーーッツ!」

赤い瞳の輝きは青年を捉えていた。
本性を現した土蜘蛛たちを相手に、青年にとっての平常運転での乱闘がその日も始まった。

「ぐっぁああああ!」

先ほどまでの大暴れが嘘であるかのように地面深く叩きつけられ、頬をすり剥き血みどろとなる白い服。

「くそ・・・こたえろ・・・・・・・」

「・・・ちくしょう・・・・・・ユタカは・・・・・・ユタカはどこにいる!」

自らに問うようにその声は虚ろに響いた。

地面に生えた草を掴みながら朦朧とする意識を揺さぶりかけるように
テルヒコは衣の下に括り付けていた帯をほどき、錆びついた古(いにしえ)の神器を土蜘蛛たちにめがけ天高くかざすのであった。

「???!!!!(土蜘蛛)」

「お前たちの元居た場所に帰れ・・・・!」

突如として現れた障壁が光を放ち、妖魔どもの蠢く寺院と、粗野な青年周囲の気配を一気に静寂に変える。


(たかあまのはらにかむづまります
高天原に 神留坐す

かむろぎかむろみの
神漏岐神漏美の

みこともちて
命以ちて

すめみおやかむいざなぎのおほかみ
皇親神伊邪那岐の大神

つくしひむかのたちばなのどの
筑紫日向の橘の小門の

あわぎはらに
阿波岐原に

みそぎはらいたまうときに
禊祓ひ給ふ時に

あれませる
生坐せる

はらえどのおおかみたち
祓戸の大神等

もろもろまがごとつみけがれを
諸々禍事罪穢を

はらいたまえきよめたまうと
祓へ給ひ清め給ふと

もうすことのよしを
申す事の由を

あまつかみくにつかみ
天つ神地つ神

やおよろづのかみたちともに
八百万神等共に

きこしめせと
聞食せと

かしこみかしこみももうす
畏み畏みも白す)

「諸々のマガゴト罪穢れを、祓えたまえ、清めたまえ・・・!」

照彦の唱える天津祝詞の言葉は、庭園に散らばった醜悪な土蜘蛛共の腐臭を鮮やかな日差しの暖気と共に消失させていた。

体力の全てが尽きたテルヒコは、がれきの山に大の字のごとく倒れた。

死力を尽くし乗り込んだその場所も、結局彼の探し求めていたものを知りうる手掛かりなどは一切なく

彼の戦っているものが、想像をはるかに超越する規模の組織で

その闘いがその先の未来まで続いていくであろうことを

容赦なくがんがんと照り付ける日の光と、その澄み渡る空は教えているようだった。

「ユタカ・・・いったいどこにいるんだ。」

青年の願望はこの日も叶えられることはなかったのである。

失ったものは、あまりにも大きすぎた。

九頭龍王第壱形態(クトゥルフ)

九頭龍王第弐形態(神獣態)

大友宗蘭

豊後に本拠を持つキリシタン大名。洗礼名は(フランシス/腐乱死師)

日向国を自らの王国(”無鹿/ムシカ”)とすべく在地氏族である島津家と戦い、高城耳川の合戦においても初代・創聖者チームと本格的に激突する。その教義の実体は教会共にマガツカミの温床・羽化の苗床となっており将としての無謀さ、気まぐれで暴虐な性格等から日に日に人望を失いつつある。

砂上の楼閣に魅せられた夢想家(ドリーマー)。

 

(追憶の神器/イメージアート)

戦国時代、耳川の合戦にて聖地を破壊し宮崎をマガツカミの理想郷とすべく侵攻したキリシタン大名大友宗蘭の堕天するマガツ将軍イブキに挑む初期創聖者三人。(テルヒコ・シマコ・サクヤ)

  

鬼神スサノヲ

中央/テルヒコ

(記憶を失い戦国の世を彷徨う王子テルヒコの創聖した・スサノヲアームド形態。自ら戦う理由、愛する者たちの記憶一切を忘れており闇を討つその本能のまま修羅の如く闘い続ける。)

 

右側/シマコ

(邪馬台国時代のテルヒコの親友シマコこと浦島太郎が創聖した水神ワダツミ。テルヒコからかつて神器を渡されており海底の龍宮で特殊能力を身に着けた。

ミーハーでお調子者だが意外と涙もろい。)

 

 

左側/サクヤ

(神器継承者として宮崎を代々守護してきたコノハナサクヤヒメの後裔、姫神サクヤ。公私ともに使命に生き普段でもサクヤを名乗る。蔦のような重火器、カグツチを愛用するスナイパー。地元人であることに誇りをもつ鉄火娘。)

マガツヒノカミ(禍津日神)

ユタカ(無鹿の里時代)

(戦国の世にて大友家の陣営地である無鹿(ムシカ)の里でシスター(キリシタン比丘尼)として孤児たちと暮らす。合戦時島津大友軍の戦において、強大なマガツヒノカミの力を暴走させてしまう・・・。)

episode.1・(業火)元号/令和

割れた姿見に映る戦士として復元された新たな姿。その夜、研究室は炎に包まれた。

施設に鳴る雷。大善は邪悪を討つ日神の誕生をその闇のなかで高笑いと共に盛大に祝福する。

 

episode.2・(意識の連鎖)元号/令和

創聖者テルヒコ。研究室にやって来た彼は、かすかに残る友人たちとの安らぎの記憶を回想する。

邂逅、別離、宿る決意。青年はその光を信じ、走り出す。神器を握る者は、まだ他にいる―!

 

episode.3・(~Encounter~二人の王子)元号/令和

新時代、神器によって呼ばれた三人はいまだに気付かずいた。その戦いが、因縁が神代のはるか昔から続いていたことを。

友を得た孤独な戦士は新たな地平で戦うことを誓う。

 

episode.4・(~Legends~最後の約束)元号/XX

少女の瞳に消えず映っていた想い出の欠片、二人の王子の友情、熱い魂を神器だけは知っていた。

 

episode.5・(夢幻のなかで宛てた手紙)元号/平安

平安時代末期。倒せカラス会本部、大和の霊場にて待ち構える人外、かつて魔に堕ちた同胞-、土蜘蛛たち。張り裂ける想いを言霊に乗せ、亡国の王子は鏡と共に一人戦い続ける。

 

episode.6・(瞳の傍らで)元号/令和

平和な街のカフェで、優雅でけして油断できない仇敵(ライバル)とのひと時。

かつての姫君は冥王の挑戦状(エスコート)を受ける。

美しい浜辺に輝く青、千数百年の時の狭間で、テルヒコとユタカの間に吹き渡る一陣の風―。

 

episode.7・(証言)元号/令和

石上(カラス男)の過去を知る古老、鞠子の証言を取材するプロジェクトスタッフ、十蔵(ジュウゾウ)。

男たちが辿った数奇な人生、昭和初期のダークサイド、禁断の扉がこれから開く―!

 

episode.8・(もうひとりのアマテラス)元号/令和

大善の本家、日奉神社の伝承を辿る十蔵。滅ぼされし女王国の末裔であった海家の因縁。

天界と魔界の戦い、その因縁は彼ら一族の鏡をめぐる戦いとして反映されていた―!

 

episode.9・(戦いのすべて)元号/令和

愛の記憶。悲しみの呼び声は、彼に力を与える無限の力になっていた。

自らの出生の秘密のヒントに触れた時、青年の新たな旅は始まろうとしていた。

 

episode.10・(怪人だった。)元号/昭和

昭和初期の闇市で、ペンキで描かれた摩天楼に現れた怪人カラス男、マサヤ。

見世物小屋の同僚たちとの思い出。誰より人を愛していた。彼はただ、だれより純粋だった。

闇にひきこまれてゆく青年石上雅也(マサヤ)の過去を描く。

 

episode.11・(闇夜を翔ぶ)元号/昭和

黄泉の奥底で眠る九頭龍王。イブキは自らを地上へ復活させる極上のその魂を狙っていた。

弱肉強食の戦後、出会った九尾と石上。

闇のなかで、カラス男雅也はその漆黒の羽を広げる―!

 

episode.12・(~Inspire~交錯点)元号/昭和

雅也の父、石上西湖(せいこ)は陰陽連特務機関カラス会に息子を狙われていた―!

この時代においてもカラス会と戦い続けていたテルヒコは、西湖と、彼に挑戦状を叩きつけたという謎の少年の果し合いを見守る事に決める。

 

episode.13・(バイオレンス・タイム)元号/昭和

少年甲三に化けていた九尾の狐とテルヒコは偶然路上にて再会を果たす。屈辱と血に濡れたその歴史。

「ヤツは忘れても、オレの瞳は決して忘れない―!」

 

episode.14・(最後のモノノフ)元号/昭和

果し合い当日。テルヒコがかたずをのんで見守る中、

石上一族の末裔、神道家西湖と甲三(九尾)の互いの死力を尽くしたサイキック・バトルを描く。

 

episode.15・(卑弥呼の鏡)元号/昭和

アマテライザーの謎。巨大な天照大神の石像を掘る謎の老人、清吉のもとに大善はやってきていた。

大善が体験した世界、衝撃の真実とは。娘、千里の誕生までを描く。

 

episode.16・(明かされぬ謎)元号/昭和

成長した娘千里と大善(テルヒコの祖父)、そして昭和中期によみがえったイブキ(九頭龍王・石上雅也)との攻防を描く。

愛と憎しみの記憶は時代を越えて輪廻する。

 

episode.17・(クニのマホロバ~prince eyes~)元号/弥生

弥生時代、滅亡前夜の邪馬台国にて卑弥呼・テルヒコ・ユタカの記憶を追う。ただ、純粋な夢があった。

鏡によって引き起こされた、全ての物語のはじまり。

 

episode.18・(Darkness dream)元号/平安~戦国

平安時代、魔王イブキの化身である酒呑童子の見せる悪夢に悩まされる源頼光の話。

夢の中で頼光が出会った青年のうち放つ十束の剣、彼は軍神スサノヲの再来なのか。暗黒の中で彼はかつて置き去りにした悲しみの影を追う。

 

 

 episode.19・(追憶の神器(レガリア))元号/戦国

罪に濡れた大地で出会った三つの魂。

戦国時代、神器に導かれ結集した三人の創聖者(テルヒコ、シマコ、サクヤ)が

魔道に堕ちたキリシタン大名、大友宗蘭の堕天するマガツ将軍イブキに挑む話。

マガツ神の温床となる理想郷を日向(宮崎)に建国せんと野暮を燃やすイブキ(宗蘭)に初代創聖者らが敢然と立ち向かう!

揃った神器の力、前人未到の創聖を見よ!

 

壱・再来の鬼神

弐・異界(リュウグウ)よりの帰還

参・~Savior~創聖者の命

結・~Musica~永遠の暁

 

episode.20・(アリア~詠唱歌~)元号/戦国

戦国の世、敵将宗蘭が根を張る大友家の拠点で橘(タチバナ)を名乗る謎の聖女と青年は出会った。決戦の地。三人の天使(創聖者)が舞うムシカの里で、燃えあがる命の輝き。シリーズグランドフィナーレ。

 

episode.21・(~序曲~ソウセイセヨ)神代

次元を越えた高天原にて織り成される神話時代の物語。

※本エピソードが最終項となります。

 

(つづきは近日公開!おたのしみに)